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「えぇ〜・・・・・・クリスマスまで来るの? 別に、来なくてもいいのに」
 昨日、クリスマス・イヴも来たし、その上さっき、カフェで解散したばっかじゃん。
「いや、来る」
 輝月はその一点の曇りもないきっぱりした言葉になんと打ち返せばいいのかわからず、ため息をつきながら窓を閉める。
「もう・・・・・・」
「なに、その嫌そうな顔」
 してないよ、とめんどくさそうな顔に作り変えて、勉強机の椅子に座る。翔琉は窓の近くの壁にもたれて立っていた。
「今で何ヶ月? えーっと、六、七、八、九、十、十一・・・・・・七ヶ月目になるんだ。おお、七ヶ月」
 指折り数えて、翔琉は感心したように顔を輝かせた。いつの間にか一ヶ月、二ヶ月と年月は過ぎてゆき、ついに半年も越したらしい。
「ね、姫、クリスマス会、楽しかったでしょ?」
「ん? まあ、ね」
 急に変わった話に、気のない同意する。でも、ウソじゃない。
 海水浴のことはほとんど誰も覚えていなくて、最近は翔琉も人目につくところでは付き合いを避けていたから、話の輪には入れなかったものの、あからさまな仲間はずれにもあわず、普通に楽しめた。
「あ、あれ」
 翔琉の視線が、ベッドの上の小さな袋に吸い寄せられている。クリスマス会でもらった、プレゼントだ。
 解散したあと、あ、それ私の、とか俺が買ったやつだ、とか話してたけど、話す相手なんていない輝月は直帰したので、誰からのものかはわからない。
 なので、少し怖いのである。
「開けないの?」
「あ・・・・・・いや、今、開ける」
 輝月の元へやってきたプレゼントの中身は、マジェステだった。一見バレッタみたいなヘアアクセサリーで、束ねた髪に金具を刺し、簪のように留めるもの。ちなみに、初めて見たから全部調べた。
 どうやらマジェステの基本は鼈甲タイプが基本らしくて、これも例にもれずに鼈甲だった。
「お、似合いそうじゃん!」
 窓の近くに立つ翔琉が、横でにこにこしてる。その笑顔から顔を背けて、輝月は答えた。
「・・・・・・そんなことないでしょ」
 普段、まったく髪を結ばない輝月。腰まである自慢の髪の毛は、いつも垂らしたままだ。
 かといって無下に捨ててしまうのももったいないし、これを選んでくれた名も知らぬ子にも申し訳ないし、なにより色使いがなんとも可愛い。
 腕を伸ばして、勉強机の奥に立てて飾っておく。
「え? つけないの?」
「・・・・・・つけ方、あんまよくわかんなかったし」
 それに、似合わないに決まってる。こんな、大人っぽい髪飾り。
 心の中でつぶやいて、ため息をもらした。