駅前の並木道。ずらりと並ぶ桜に囲まれ、親友と小夜は顔を合わせた。
「急に呼び出してごめん。あの、花音、私」
「ごめんっ」
 急に頭を下げられ、小夜は面食らう。
「えっ?」
「考えたら、怒るの当然だよね。ごめんね、我慢させて。街で似た人を見かけては謝ろうとしてたんだけど、ほとんど人違いで。やっと会えて、よかった・・・・・・」
「花音。ありがとう・・・・・・勝手に一人で怒って無視して、ごめんね」
 懐かしい声を聞いていると、罪悪感とともに、嬉しさが込み上げてくる。
「あっ、ごめん。自分勝手なんだけど、このあと予定があって」
「ああ、帰っていいよ。それだけ伝えたかったから。彼氏?」
 聞かれた花音は少し驚いて、それからはにかんだ。
「うん!」
 桜の花びらが舞う並木道の下小さくなる親友の背中を感慨深く見送っていると、ぽんと肩を叩かれた。梨乃だ。こっそり見ていたらしい。
「どう? 仲直りはできた?」
「うん。ありがとう」
「なんもしてないよ、私たちは」
 雅が姿を現し、言った。梢も笑っている。
「そうそう。あんたが一人で頑張ったことだからね」
「頑張ったね、小夜」
「お母さぁん」
 最後にくしゃくしゃと頭を撫でてくれた涼夏を見上げ、抱きつく。
「そういえばさ、小夜っていつまでうちにいられるの?」
「え? 期限とかあるの?」
 梢の言葉に、雅の表情が曇る。涼夏や梨乃の顔も強張った。別れのときを想像したんだろうか。
「うん。前はあったけど」
「けど・・・・・・?」
 皆の、不安を孕んだ視線が少し照れくさいが、言うしかない。
「この前家族に電話して、これからもシェアハウスで暮らしたいって言ったらOKもらった」
「えっ、本当?」
 雅が目を見開いた。横で、梨乃が飛び上がる。
「やったーっ」
「いや、私がいない思い出を、あの家でつくられるのはちょっと悔しくてさ」
「大好きじゃん、私たちのこと」
 赤くなった小夜に、梢がにやにやする。
 言い返す言葉が見つからない小夜。
「帰ったらお祝いだね!」
「よっしゃ、早く帰るぞ」
 梨乃の言葉に、五人は大好きなシェアハウスへ走り出した。