手には風車や凧を持っていて、太陽の子供達の様に眩しい笑顔で駆け寄ってくる。
 そんなはしゃぐ子供達に吊られて、次々と「姫様!」と歓喜の声をあげながら、大人達も駆け寄ってくる。
「姫様!姫様!」
 眩しい笑みで駆け寄って来た子供達に、口元を緩ませながら「楽しんでおるかの?」と尋ねた。子供達は無邪気な笑みで「はい!」と大きく答え、「これあげます!」と舌っ足らずの声で手に持っていた風車や、花をわらわに向かって一生懸命差し出してくる。わらわは「良いのか?」と言いながらも、笑顔で受け取った。
 そうして囲っている子供達の頭をよしよしと、優しく撫でていると。第二波として、大人達が子供達の後ろで囲いを作り始めていた。
 いつもわらわを見ると、総勢で駆け寄って優しい笑みで迎えてくれる。
 他国では、姫と民がこうも易々と接し、囲いを作るなんてもっての外であろう。だが、わらわはそれを許しているのだ。いや、寧ろこうして欲しい。
 姫と民の間に、そこまで厳格な格差をつけなくても良いと思うている故だ。
 それにこうしているからこそ、分かる事や学ぶ事が多くある。そして改めて実感するのだ、なんと優しき民達であろうか、と。
 この民達がいるから、美張には安寧が訪れているのだろう。
 平和の象徴である民達を見ると、わらわの胸はじいんと温かくなった。
 そしてこの笑顔を守る為に、わらわはより精進せねばと、改めて思いが強くなる。
「姫様、私共のおはぎをどうか召し上がって下さいませ!」「いいえ姫様!私共の野菜を受け取って下さいまし!」「私共の魚も!」「お酒もいかがでしょうか?!」「この簪はいかがですか?!きっと姫様にお似合いです!」
 矢継ぎ早に飛んでくるお願いに、微笑みながら「うむうむ、全て回るとしよう」と答えると、民はより白い歯を見せて「急いで準備致します!」と蜘蛛の子を散らす様に戻って行った。
 あっという間に大人達の囲いが消えるが。次いで、子供達も「父ちゃん達に伝えて来ます!」と走って行き、あれほど大きかった囲いが無くなってしまった。
 するとその様子に、半歩下がった横から「やれやれ」と憮然とした言葉が聞こえる。
「相変わらず、ここの人間達は境目がありませんね」
 京が冷めた口調で言ったので、わらわは振り向き「良いではないか」と頬を膨らませながら突っ込んだ。