長袖シャツの下は、いつも黒のスラックスだ。ただ、長い髪の毛だけは、夏場だけ、一つ括りにしている為、僅かにうなじが見える。
「あ、首元!」
ワザと千夏は、相川の首元を指差した。千夏に背を向けていた、相川の身体が僅かに跳ねた。
ゆっくりと、相川の肩に手を置いた瞬間、飛び上がるようにして、相川が席を立ち上がった。
「な、何ですか!触らないでください!本気で課長にいいますから!」
千夏を睨み上げると、相川は、嫌悪感を露わにして目元をきゅっと細めた。
「悪い、コレついてたから」
相川の瞳が、僅かに見開かれるのが分かった。
「何?ただの髪の毛。自分の髪の毛が、そんなに珍しい?」
「いえ、別に……でも次回からは、触らないでください」
真顔の相川に、違和感を覚える。
「了解。僕もセクハラで辞職願は出したく無いからね。会議14時だよ」
「午後からの会議には、間に合うように行きますからっ」
額に汗を掻きながらビビンバを食べている相川にヒラヒラと掌を振ると、千夏は、会計を済ませて店の外へ出た。
見上げた空は、ところどころに雲が浮かんでいるが、上空の風は強いのか、あっという間に流れて、空は、剥き出しの青一色になる。
「……いい天気だな……」
こんな日は、思い出す。よく彼女と手を引いて歩いた散歩道を。
「安心して。赦すことはないから……」
千夏の吐き出した言葉は、すぐに真っ青な空に吸い込まれていく。
「さぁ、先に燃え尽きるのは誰だろうね」
千夏のスラックスのポケットには、捨てるフリをして、忍ばせた相川の髪の毛と、復元されて手元に戻ってきたばかりの波多野文香のスマホが入っていた。
「あ、首元!」
ワザと千夏は、相川の首元を指差した。千夏に背を向けていた、相川の身体が僅かに跳ねた。
ゆっくりと、相川の肩に手を置いた瞬間、飛び上がるようにして、相川が席を立ち上がった。
「な、何ですか!触らないでください!本気で課長にいいますから!」
千夏を睨み上げると、相川は、嫌悪感を露わにして目元をきゅっと細めた。
「悪い、コレついてたから」
相川の瞳が、僅かに見開かれるのが分かった。
「何?ただの髪の毛。自分の髪の毛が、そんなに珍しい?」
「いえ、別に……でも次回からは、触らないでください」
真顔の相川に、違和感を覚える。
「了解。僕もセクハラで辞職願は出したく無いからね。会議14時だよ」
「午後からの会議には、間に合うように行きますからっ」
額に汗を掻きながらビビンバを食べている相川にヒラヒラと掌を振ると、千夏は、会計を済ませて店の外へ出た。
見上げた空は、ところどころに雲が浮かんでいるが、上空の風は強いのか、あっという間に流れて、空は、剥き出しの青一色になる。
「……いい天気だな……」
こんな日は、思い出す。よく彼女と手を引いて歩いた散歩道を。
「安心して。赦すことはないから……」
千夏の吐き出した言葉は、すぐに真っ青な空に吸い込まれていく。
「さぁ、先に燃え尽きるのは誰だろうね」
千夏のスラックスのポケットには、捨てるフリをして、忍ばせた相川の髪の毛と、復元されて手元に戻ってきたばかりの波多野文香のスマホが入っていた。