「もう、亜由にこんなことしないから……だから、亜由もこれからも俺だけを見て……」

和樹の掌が、少し腫れた亜由の頬に触れて、唇が重ねられる。

(もう限界……こんな生活も、和樹と暮らすのも……)

何度も口づけを交わしながら、リビングのソファーに連れていかれ、組み伏せられる。

今からされることを考えると、殴られていた方がマシなのかもしれない。

「愛してる……亜由」 

「私も愛してるよ、和樹……」

「ごめんな、優しくするから」

もう、和樹とこんな結婚生活は、続けられない。目の前で自分の服を脱がし、愛撫しながら、腰を振る和樹に、亜由の愛情は、とうに殺意に変わっていた。
 

ーーーーやめて。


「可愛い声聞かせて」

耳元に寄せられる唇から、紡がれる言葉に吐き気がする。和樹に触れらて身体を熱くして、甘い声を発する自分自身にも。
 

ーーーーたすけて。


このままじゃ、籠の中の鳥は何処へも行けずに、飼い主に閉じ込められて、心も身体も壊れても尚、無残に引きちぎられて、生涯縛り付けられる。