「まーまー、どうじょ」

可愛らしい我が子の声に、結衣は、過去から現在へと引き戻される。

栗色の髪を揺らしながら、おままごとのお料理のオモチャをこちらに差し出す娘に、結衣は目を細めた。

「ありがとうね」

ニカッと笑う娘の笑顔に癒されつつも、結衣は一つだけ、気になることがあった。

娘の顔は、結衣に、瓜二つなのだが、口元の左下にホクロがあるのだ。


そのホクロを見るたび、玲子の顔が過ぎった。


「さぁ、ママと一緒に、お庭のお花にお水をあげましょう」

「はぁい」

淡い紫色のワンピースを揺らしながら、小さなジョウロに水を入れて、小さな花壇に水をあげていく。

「貴方の幸せが、ママの幸せよ」

ふわりと娘の頭を撫でると、結衣は笑った。

娘は、またジョウロに水を入れにいく。
その後ろ姿を目を細めて、眺めていた時だった。

ーーーー娘がふと、立ち止まる。


栗色の髪をゆっくり揺らしながら、こちらを振り返る。


「結衣の幸せが私の幸せなの」


娘は、口元を三日月に模すと、ニヤリと笑った。