「えと……アイツには兄貴がいるんすけど、兄貴が、クソ親から、LOVEを虐待されないように、高校卒業してから、バイトして、LOVEだけ別のアパートで匿ってましたからね。で、その兄貴だけが、その後も虐待され続けたみたいすけど」

饒舌に話す古林を見ながら、千夏は、グラスのウイスキーを飲み干した。

「兄妹ってのは、固い絆で結ばれてるもんだからな……」

「お兄さんにも居るんすか?妹さん」

千夏は、ピーナッツの載った銀皿の上に、数枚丸めた一万円札を放り込むと、席を立った。

「……いや、生憎一人っ子なんでね」

「お兄さん、整った顔してるんで、妹とかいたら、マジで美人でしょうね」

上部だけの社交辞令にすら吐き気を覚える。

今すぐにでも、殺してしまいたい衝動を抑えるように、千夏はスラックスの左ポケットに入れた掌にグッと力を込めた。

「どうも。また来るよ、LOVEに宜しく」

「あ、お兄さん、名前聞いても?」

千夏は、緩やかに唇を持ち上げた。