「……へぇ、そうでしたか。確かに、顔も身体もいい女ですよね。傷痕だけが、残念すけど。あと、勝ち気なのに、脆いところもまたそそる」

(……傷跡ね……)

僅かに、千夏への返事が遅れたのは、嫉妬だろう。

ーーーーそして、千夏への牽制だ。

自分もLOVEを抱いていて、またその関係は、千夏よりも深く、長い付き合いだという事をニヤニヤとヘビのような目つきを、しながら暗に匂わせている。

蛍を殺したとされている、志田大樹。蛍の事件に大なり小なり関わっているとされているのが、志田大樹の高校時代の先輩である、古林洋介だ。

そして、大樹が行方不明になる直前の電話の相手が、目の前のこの男……。

この古林と志田愛瑠が、志田大樹失踪前から、現在まで、未だに繋がっているのではないかというのが、千夏の仮説だった。

(見事に繋がってるとはな……)

千夏は、思わず笑いそうになる口元を隠すように覆いながら、肘をついた。

「……なぁ、アンタじゃないよな、LOVEの傷痕」

千夏は、伏せていた瞳を上げると、古林を睨み上げてみせた。

その瞳に、古林は、一瞬体をこわばらせる。

(知ってる事、早く全部吐けよ)

「まさか、俺じゃないっす。LOVEから聞いてませんか?親からの虐待らしいですよ……」

(虐待ね……)

「へぇ、親ね……信じられないけどな。一度警察に行けって言ってんだけどね。で?アンタは、詳しく知ってんの」

警察の2文字に、古林の頬が僅かに引き攣る。

千夏は、古林への視線はそのままに、煙草の火を消した。