「誰だろうな……『愛』する人と行けたらいいんだけどね」

(『どなた』と見に行かれる、とは、つまり、『誰』から聞いたのか)

「……そうですか、不躾なことを聞いてすみませんでした」

嫌らしく笑いながら、男は、一度下にしゃがむと、ピーナッツの乗った銀皿をことりと置く。

千夏が、指先でピーナッツを弾きながら、皿の底を見ると、小さな紙包みが見えた。

(コカイン……本来なら、現行犯逮捕だな……)

千夏は、ゆるりと唇を持ち上げながら、ピーナッツを放り込むと、ポケットに紙包みを入れた。