「こういうときにはどうすればいいのか……まったく……弟にもっと聞いておけばよかった」
「弟さんが、いらっしゃるのですね」
「ん? ……ああ。血のつながりこそないが、俺の大事な弟だ。このあいだ結婚した」
「あら、おめでとうございます」

 蛇の弟さんだから……やっぱり、蛇なのだろうか?
 蛇のあやかし同士も結婚をするのだな、と思ったら、なんだか和んだ。

「俺にもそろそろ結婚しろしろとうるさいのだが、結婚にはこれまで興味がなくてな……見合いもすべて断ってきたのだが……弟に言われると弱くてな。あいつの言うことを、俺は無視できない。他のやつの言うことなら気になどしないのだが」
「弟さんを大事にされているのですね。すてきです」

 なんてことないことを言った直後、急に……彼は、咳込んだ。

「な、なにを言うんだ、いきなり」

 心なしか、顔も赤くなってる気がする……。
 大丈夫だろうか?
 まだ傷が治りきっていないのかしら?

 私は慌ててそばに寄る。

「大丈夫ですか。まだ傷が悪いですか。それとも、なにかが喉に詰まりましたか」
「い、いや……大丈夫だ。……ただ、すてきって言葉を言われただけで、こんなに破壊力があるとは……」
「破壊? ――なにか危険が迫っているのですか?」
「違う、違うんだ……その……」

 彼の横顔は、熱でも出したように赤く染まっていた。
 これは……。

「お風邪ですか。まだ傷が治りきっていないのですか」

 怪我をして、衰弱していたのだから。
 熱を出したっておかしくない。

「だ、だから、違うんだ。体調はもう大丈夫だ」

 大きな声を出されたけれど、怖くなかった。
 不思議だ。ふつうは、大きな声は、怖いだけなのに。

 私は心配して、その顔を覗き込む。……悪い病気じゃないかしら?
 顔を、彼は肘でかばった。

「すてき、と言われただけで、こんなに……」
「えっ? 申し訳ありません、いまなんて――」

 うまく聞き取れなくて、私は聞き返したのだけど。

 その言葉の続きを聞く前に、ふいに、足音が聞こえてきた。