――目がさめると。

 ひかり……淡いひかり。
 小鳥が鳴いている。
 忌み子の私の座敷牢にも、朝は平等にやってくるのだから不思議だ。

 ――蛇。小さな蛇は、元気になってくれただろうか。

「怪我は……」

 寝ぼけまなこのまま、私は手を伸ばす。
 しかし、私のつくった小さな布団はもぬけの殻で……蛇は、いなかった。

 怪我を治して、そのまま出て行ってしまったのかもしれない。

「……そうですよね……」

 幻想にすぎなかった……こんな私と、ずっといっしょにいてくれる生き物が、できるなんて。

「生きているならよかったです……小さな蛇、お元気で。私とひと晩でもいっしょにいてくれて、ありがとう――」
「勝手に追い出さないでほしい」

 男のひとの低い声が、背後から響いてきた。

 ひゃっ、と喉の奥から声が出てしまった。
 だれ? 村人? 聞かれていたの?

 自分でも情けないのだけど、勝手に両手が自分自身の身体をかばってしまう。……もう私の身体も年相応に大きくなったけれど、小さなころからの癖。

 だれですか、と問うことなど怖くてできない。
 私にできることは、ただ、謝ることだけ。

「ご、ごめんなさい……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 深いため息が聞こえた。

「……怖がらせたいわけではない」
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」
「ちょっと、落ち着け」

 がさごそ、と動く音がして。
 ぽん、と。
 私の肩に、手が載せられた。……あたたかい。

 私に、さわった?
 どうして? それは村の禁忌のはず。
 穢れた私にさわったら、さわったほうも穢れてしまうのに――。

「俺は昨日、助けてもらった蛇だ」

 私は、すべての言葉と動きをとめた。
 そして、ゆっくりと振り向く。

「怖がらせる気はない。まずは……落ち着いてくれないか……」

 必死に、私を宥めようとしてくる、その男のひとは。
 まだだれにも踏まれていない朝のかがやく雪景色のような色をした髪の毛と、神さまに捧げる聖なる炎のような色をした、それでいて涼やかな切れ長の瞳をもつ、とんでもなく美しいそのひとは……。

 私が昨日助けた蛇なのだと語り、私を、心配そうに見つめてきている。
 ……穢れた私の肩から、手を離す様子もなく。

 このときの私には、知るよしもなかったのだ。

『……これが恋というものか』

 彼が、昨晩そうつぶやいていたことを。
 私に恋をしていたことを……。