やってきたのは、ずいぶん豪華な……雅なご一行だった。
 いっぱい人がいる……。

 先頭の白馬に乗った、黒く細長い冠を被って濃い紫色の衣をまとった少年が、おーいおーいと言いながら手を振っている。
 少年の周りでは、強そうな人々が守りを固めている。

「ああ、いたいた、紅兄さま、心配したよ」

 少年はひらりと地面に降り立つ。

 村人たちが小声で話しているのが、聞くともなしに聞こえてくる。

「紫色は禁色……もっとも高貴な御方しか身につけることができないはず」
「それでは、あの少年はもしや……?」
「今上の帝は確かまだ十四だとか。噂によれば、奔放で、少年の面影をまだ残されているとか……」

 強そうな男の人が、張りのある声で言う。

「帝の御前であらせられるぞ。頭が高い! 控えよ!」

 ……帝?
 文字通りの雲上人が――どうして、私たちの村に?

 でも、どう見てもこの方々はやんごとなき一行で。
 禁色を身につけている少年は、気品からして、ただものではないことが感じられた。

 村長である現当主がひざまずいて、村人たちも一斉にそうした。
 私も当然、そうしようとしたのだけれど……。

「硯はいい」

 紅が私の腕を持って、そのまま立たせてくれた。

「えっ、でも……無礼です」
「この者は俺の大事な者だ」

 紅が、ご一行にひとこと言うと……むしろご一行のみなさまが私にひざまずいて挨拶をしてきて、私は慌てた。

「そ、そ、そんな、人違いではないですか」

 私の混乱もよそに。
 重厚な衣をものともせず、少年……帝は紅のもとに駆け寄った。
 紅に比べると背の低い帝が抱きついてくるのを、紅は受け止める。

(みこと)。なぜここに?」
「なぜじゃないよ。京を発たれてから七日しても戻ってこないんだもん。心配で探しに来ちゃったよ」
「忙しいだろうに」
「兄さまの命には替えられないよ」
「よくここがわかったな」
「もう、しらみつぶし。たしか今回の旅はあっちの方向だったから、って。でもさっき、兄さま、ちょっと妖力使われたでしょう?」
「ああ、少しだけな」
「僕は普通の人間で、むかしの帝みたいに妖力を操ることはできないけど、妖力を感じとるくらいできるんだから」
「知ってる、知ってる」

 紅は苦笑しながら帝の頭を撫でる。
 もしかしてだけど、紅の言ってた弟って、もしかして……。