そうしてひとしきり、私を辱めた後。

「清、穢れが移ってはいけないから、そろそろ出たほうがいい。少しはすっきりしたかい?」
「ええ、まもり神さま。忌み子もたまには、役に立ちます」
「清はこれからこの村を守っていく長になるんだ。使えるものはなんでも使ってしまえばいい。たとえそれが忌み子でもね」

 清はまもり神さまに促されて、座敷牢を去っていった。
 私には、彼らを笑顔で見送る義務がある。正座したまま。
 最後はまた、土下座のように頭を下げるのだ。

 まもり神さまは清の肩を優しく抱きながら、肩ごしに、私を冷たく一瞥した。

 しゃらん、しゃらん、しゃらん。
 鈴の音が遠ざかっていくのを聞きながら、私は思わず安堵のため息を漏らしていた。

「あいつらは、何者だ」
「ひゃっ、べ、紅さま」

 人のかたちに戻った紅さまが、胡坐で腕組みをして座っていた。

 もっとも見られたくないところを、見られてしまったな。
 よりによって清が来るなんて……。

 私はつとめて明るく振る舞う。

「隠れていてくださって、ありがとうございます。窮屈な思いをさせてしまったかもしれませんね。大丈夫でしたか?」
「……それはこちらの台詞なんだがな」

 紅さまは、困ったようにそっぽを向いた。
 なにか言葉を選んで……迷っているようで……でも見つからなかったようで、髪を片手でぐしゃぐしゃとしてからこちらに向き直った。
 その表情は、私を、……私なんかを心配してくれているかのようだった。

「……で、何者なんだ」

 私は説明した。
 清は私の双子の妹で、水淵村の次期村長であること。
 そしてまもり神さま――「稲荷の化身」だという妖仙(ようせん)さまは、二年前にあらわれて、この村を豊かにすると約束してくださったこと。
 水害と不作の長く続いていたこの村では、まもり神さまの存在は大層歓迎されたこと。
 そんな妖仙さまが清を見初めて婚約したものだから、この村はもう安泰だと、みんなが喜んでいること……。

 紅さまは腕組みをしたまま、ときに相槌を打ちながら、私の話を聞いていた。