「謝りなさい。謝りなさいよ! 生きてることを謝罪しなさい。生まれてきたことを謝罪しなさい!」

 両手をついたまま、頭を下に向けていったとき。
 小さな白い蛇が、こちらをうかがっていることに気がついた――紅さまだ。
 紅さまは、威嚇するような目線を清に向けている。

 ――おやめください。紅さま。危ないですから。

 私は紅さまと目が合ったとき、必死で、彼に伝えた。
 清なら、小さな生き物を平気で殺してしまうだろう。

 紅さまは私の言いたいことを感じとってくれたのか、威嚇をやめる。

「硯! どうしたの? 謝る方法も忘れてしまった?」

 まずい。時間はあまりない。

 ――隠れていてください。お願いですから……。

 紅さまは不服げに舌を何度か出し入れしたが、やがて納得してくれたのか、しゅるしゅると姿を消した。

 私は急いで土下座を完成させる。

「生きていて、申し訳ありません。生まれてきて、申し訳ありません」

 清は、大声で笑う。

「ああ滑稽。ああ惨め。胸がすっとするわ!」

 清についてきた村人たちも、声を立てて笑っている。

 ……心だけ、死んでしまえれば楽だ。
 辱めを受け続けながら、未来もなく恋をすることもなく生きる人生に、これからなんの希望があるのだろう。ただ生かされているだけだ。

 私は忌み子。それはよく、わかったから。
 こんな人生が続くくらいなら、もう殺してほしい。