*
「はぁ、はぁ……っ」
もう追いかけて来ないよね。
後ろを振り返ってから、ずるずるとそこにあった木に倒れかかる。
ここに来るまで、何回死にかけたことか。
妖狐に教えてもらった、一番安全な道のりは、川を辿って山まで向かうルート。
だけど、10人以上の妖怪に殺されかけた。
さっきは巨大な骸骨、ガシャドクロに握りつぶされそうになって、命からがら逃げてきたところだ。
だけど、「もう死ぬ」って思った瞬間、彼らは襲いかかるのをやめた。
これが、九死に一生を得る、ということなのかな。
走り通しで、身体中がジンジン痛む。
ドッと襲ってきた疲れに、まぶたが落ちていって──、
ガサッ
葉っぱが揺れるような音に、眠気が飛んだ。
またあやかしに襲われるのかと身構えた、その瞬間。
翠の瞳が、わたしをとらえた。
翠色をした切れ長の瞳。
風になびく長い白髪。
艶やかな耳としっぽ。
和装がよく似合う、すらっとした立ち姿。
「……桔梗さま……?」
わたしの目の前に、記憶の中、10年前となんら変わりない、桔梗さまが立っていた。
「はぁ、はぁ……っ」
もう追いかけて来ないよね。
後ろを振り返ってから、ずるずるとそこにあった木に倒れかかる。
ここに来るまで、何回死にかけたことか。
妖狐に教えてもらった、一番安全な道のりは、川を辿って山まで向かうルート。
だけど、10人以上の妖怪に殺されかけた。
さっきは巨大な骸骨、ガシャドクロに握りつぶされそうになって、命からがら逃げてきたところだ。
だけど、「もう死ぬ」って思った瞬間、彼らは襲いかかるのをやめた。
これが、九死に一生を得る、ということなのかな。
走り通しで、身体中がジンジン痛む。
ドッと襲ってきた疲れに、まぶたが落ちていって──、
ガサッ
葉っぱが揺れるような音に、眠気が飛んだ。
またあやかしに襲われるのかと身構えた、その瞬間。
翠の瞳が、わたしをとらえた。
翠色をした切れ長の瞳。
風になびく長い白髪。
艶やかな耳としっぽ。
和装がよく似合う、すらっとした立ち姿。
「……桔梗さま……?」
わたしの目の前に、記憶の中、10年前となんら変わりない、桔梗さまが立っていた。