あれから2日が経った。
 ぼくはまた、川の前に立っている。
 となりで笑うぼくの光は、もう消えてしまった。

 彼女を目の前で殺されたこの場所。
 ぼくのことを救ってくれたあの子を、突き放したこの場所。
 ぼくは結局、何も守りきれない。

 本能のまま、転んだ彼女に飛びついた。
 名前を呼んでくれなければ、そのまま喰っていたのだろう。
 川へ放り込み、無理やりひとの世へ帰したが、それは彼女の安全を考えてではない。
 彼女を喰ってしまうのが、怖かったからだ。
 紬はぼくのことをどう思ったんだろうか。
 気味の悪い化け物だと思ったに違いないよな。

 もう終わりだ。
 終わりにしなければならない。
 ひととあやかしなんて、関わるべきではなかったんだ。
 ただ、1つだけ紬に伝えたいことがあるんだ。
 最後のわがまま、許しておくれ、紬。

 手に握りしめた最後の手紙。
 だけど、紬から返事が来ることはないんだろう。
 それどころか、もう二度と姿を見ることはないはずだ。
 どちらかが望まなくなってしまったら、手紙はおろか、あやかしの世へ来ることなどできない。
 封筒を川に浮かべる。
 さよなら、ぼくの想い。
 ごめんよ、紬。こんな形で勝手に終わらせてしまって、すまない。