懐かしいあの湖畔で、本当は寛容なんかではないと言っていた彼の姿を思い出す。

(今も胸の内は、嫉妬心が渦巻いているのかしら)

 それとも、この穏やかさは。
 とうとう私への想いが失せて、手放す決心をしたがゆえの"ありがとう"なのでは――。

(……わからない)

 訊ねれば、答えてくれるのだろうけれど。
 どうしてか訊きたくはなくて、私はただ小さく頷き、

「ルキウス様も。遠征、お気をつけていってらっしゃいませ」

 可愛げのない、無難な言葉を絞りだすだけで、精一杯だった。