感動したように、瞳を輝かせたルキウス。
 すかさず他の隊員が、

「いやーーーー綺麗な婚約者様とこんなにも仲睦まじいなんて、羨ましい超えて嫉妬すら芽生えますね!!」

「俺もかわいい婚約者ほしい!!」

「ほら、隊長! いつまでもこんな汗くさいところに立たせていたら駄目ですよ! ちゃんともてなして差し上げないと!」

 やんややんやと沸き立つ隊員にも臆することなく、「あ、そうだったね。僕としたことが」とルキウスが気が付いたように言う。
 次いで嬉し気な笑顔を咲かせたかと思うと、私の背に手を遣り、

「僕の執務室へおいで、マリエッタ。お茶を淹れてあげる」

「……では、お言葉に甘えさせていただきますわ」

 どうやらジュニーを始めとする隊員たちの目論見は、無事に成功したらしい。
 ルキウスのエスコートを受けながらその場を後にする際、

「うおおおおおおマリエッタ様、俺たちの救いの天使……!」

「マリエッタ様の身に危険が迫りましたなら、必ずやお守りしてみせますからね!!」

(すごい。小声なのに、全部聞こえているわ……)

 ただ来ただけなのに、なんだか仰々しいことになってしまった。
 チラリとジュニーに視線を遣ると、すまなそうなウインクをひとつ。

「あとはよろしく頼みます」

 はくはく動いていた口は、そう言っているかのよう。


 ルキウスの執務室は、上階の日当たりのいい場所にあった。
 隊長というだけあって、様々な人と話もするのだろう。
 執務机の前には、ローテーブルを挟むようにしてソファーが対で置かれている。

 ルキウスに促されてソファーのひとつに腰かけると、隊長さま自ら紅茶の用意を始めた。

「あまり無茶なことをして、皆さまを困らせないであげてくださいませ、ルキウス様。私も、ルキウス様が怪我を負うのは嫌ですわ」

 まあ、現状でも制服に一切傷のついていないルキウスには無用の心配かもしれないけれど、本心なのでそう告げる。
 ピタリと手を止めたルキウスは私を一度見て、それから再び茶器に視線を戻すと、

「……マリエッタがそう言うのなら。気を付けるよ」

 消沈した声は、まるで叱られた子供よう。
 苦笑を浮かべる私の眼前に、白磁のティーセットが置かれる。

「マリエッタが来てくれるのなら、もっといい茶葉を用意しておけばよかったな」