「ええっと、皆さま、落ち着いて……っ」

「ねえ、僕との訓練をサボって、いったい何の騒ぎで――?」

 届いた声に、顔を跳ね向ける。

「ルキウス……!」

「マリエッタ……?」

 信じられない、といったようにして固まっていたルキウスが、ふらりと私に向かって歩きだす。

「どうしてキミが、こんなところに」

「オレがお連れしたんですー。このままじゃ隊員皆で仲良く一晩お泊りコースだったんで」

「さすがに夜まで訓練はしないよ?」

「体力切れで動けないってんですよ!! ったく、紫焔獣が出たって時に隊員全員使いモノになりませんじゃ、シャレになりませんからね」

「僕が動ければ問題ないでしょ」

「大ありですよお! それこそ隊長が一人で突っ込んでいって怪我でもされちゃあ、その後の兵力が大幅に下がっちまうんですから! 怪我! 駄目絶対!!」

(なんだかジュニーが可哀想になってきたわね……)

 そうだそうだとものすごい勢いで頷く隊員を見るに、ルキウスはルキウスで人望はあるようだけれど。
 それもこれも、ジュニーが自由奔放なルキウスをこうやって制御してくれているからなのだと思う。

「だいたいさ、ジュニー。キミが連れてきたってことは、僕を差し置いてマリエッタに会いに行ったってことだよね?」

「あ、そこ詰めてきちゃいます? 仕方がないじゃないですかあ。隊長は浄化石が戻るまで本部待機なんですから」

「ジュニー、手合わせ三十本ね」

「なんで!? むしろ良く連れてきたと褒めるべき案件じゃないですかあ!?」

「うん、マリエッタと会えたことは感謝しているから、ニ十本差し引いてあげたよ」

「いやちっとも優しくないですからね!? なんで罰則ついてるんです!?」

「僕よりも先にマリエッタと会ったのと、キミたちの都合で連れ出されてしまったマリエッタへの謝罪分」

「あ、いえ、ルキウス様。それは違いますわ」

 私がは慌てて否定を口にして、

「私もずっとルキウス様にお会いしたかったのですもの。ジュニー様に連れてきていただけて、助かりましたわ」

「マリエッタ……!」