「僕は子供を持つのなら、マリエッタとの子がいい。でもこれは決して役割だとか、務めだからとかじゃなくて、マリエッタが大好きだから思うことだよ。僕の気持ち、伝わった?」
絡めた手を持ちあげて、ルキウスが私の手の甲に柔いキスを落とす。
私はというと、はしたなくも開いた口がまったく閉じなくて。
(だって、だって……! そもそもこうして触れてくれるのだって、初めてで……!!)
固まる私の胸中など、どうやらお見通しらしい。
ルキウスは上機嫌ににっこにこと笑みながら、
「だって、いくら婚約者でも、僕の気持ちを押し付けるのは違うでしょ? だから、マリエッタがデビュタントを迎えるまではって我慢してたんだよ。本当は、その前にキミの気持ちがはっきりと僕だけに向いてくれれば良かったんだけど……」
弧を描いていた唇が、拗ねたようにして尖る。
「やっとこれで堂々と、キミをエスコート出来るようになったっていうのに。どうやらじっくり待ちすぎてしまったみたいだね」
「ええと、ルキウス様の誠実さには、本当に心から感謝をしておりますわ」
「うんうん、キミはいつだって律儀だよね。けどね、マリエッタ。僕がほしいのは、感謝じゃないんだよね。ねえ、もう一度その胸に訊ねてみてよ。キミの"真実の恋"の相手は、僕なんじゃないかな?」
「そ、れは……」
訊ねるようにして、胸に抱いた白薔薇へと視線を落とす。
重なる花弁の先にある心臓は、ドクリドクリと常とは違う跳ね方をしていて。
そのきっかけになっているのはおそらく、目の前で、愛おし気な眼差しを向けてくる幼馴染な婚約者なのだろうけれど。
目を閉じると浮かぶのは。
焦がれるような熱を全身に巡らせ、その側にありたいと、望むのは。
「――ごめんなさい、ルキウス様」
確かに私は、アベル様のことを何も知らない。
好きなモノ、嫌いなモノ。
どんな幼少期を過ごして、どんな覚悟を持って、王子としての采配を振るっているのかも。
けれど、だからこそ。
知らないから、知りたいのだ。あの人の、ひとり抱える本当の心に。
そして私の事もどうか、知ってくれたのなら。
("恋"って、こんなにも大胆な感情なのね)
絡めた手を持ちあげて、ルキウスが私の手の甲に柔いキスを落とす。
私はというと、はしたなくも開いた口がまったく閉じなくて。
(だって、だって……! そもそもこうして触れてくれるのだって、初めてで……!!)
固まる私の胸中など、どうやらお見通しらしい。
ルキウスは上機嫌ににっこにこと笑みながら、
「だって、いくら婚約者でも、僕の気持ちを押し付けるのは違うでしょ? だから、マリエッタがデビュタントを迎えるまではって我慢してたんだよ。本当は、その前にキミの気持ちがはっきりと僕だけに向いてくれれば良かったんだけど……」
弧を描いていた唇が、拗ねたようにして尖る。
「やっとこれで堂々と、キミをエスコート出来るようになったっていうのに。どうやらじっくり待ちすぎてしまったみたいだね」
「ええと、ルキウス様の誠実さには、本当に心から感謝をしておりますわ」
「うんうん、キミはいつだって律儀だよね。けどね、マリエッタ。僕がほしいのは、感謝じゃないんだよね。ねえ、もう一度その胸に訊ねてみてよ。キミの"真実の恋"の相手は、僕なんじゃないかな?」
「そ、れは……」
訊ねるようにして、胸に抱いた白薔薇へと視線を落とす。
重なる花弁の先にある心臓は、ドクリドクリと常とは違う跳ね方をしていて。
そのきっかけになっているのはおそらく、目の前で、愛おし気な眼差しを向けてくる幼馴染な婚約者なのだろうけれど。
目を閉じると浮かぶのは。
焦がれるような熱を全身に巡らせ、その側にありたいと、望むのは。
「――ごめんなさい、ルキウス様」
確かに私は、アベル様のことを何も知らない。
好きなモノ、嫌いなモノ。
どんな幼少期を過ごして、どんな覚悟を持って、王子としての采配を振るっているのかも。
けれど、だからこそ。
知らないから、知りたいのだ。あの人の、ひとり抱える本当の心に。
そして私の事もどうか、知ってくれたのなら。
("恋"って、こんなにも大胆な感情なのね)