わ、と淑女に似つかわしくない声をあげてしまったのは、ルキウスが私の身体を横抱きで持ちあげたから。
 突然の浮遊感にバランスを崩し、とっさにルキウスの胸元を掴むと、

「そうそう、ちゃんとつかまって」

 スタスタとソファーへ進んだルキウスが、私を抱えたまま腰を下ろす。
 やっとのことで解放されるのかと思いきや、横抱きの私を膝に乗せただけで、一向に放す素振りを見せない。

「ルキウス様、降ろしてくださいませ!」

「んー? やーだ」

 ルキウスは歌うように拒絶してから、小首をかしげ、

「これでもまだ、僕が妹扱いしていると思うの?」

「へ? え、ええ。"妹"相手だからこそ、こんなお戯れが出来るのですよね」

「うーん、これはどうにも根が深そうだね」

 まず、一つ目に。
 ルキウスは膝裏にあった右手を私の手元に伸ばし、私の人差し指をちょんとつつく。

「マリエッタとの婚約をせがんだのは僕だよ。それは合っている。けどね、マリエッタがお嫁さんになってくれたら嬉しいなって思ったからで、妹にしたいだなんて考えていないよ。たしかにマリエッタが妹だったらなあって想像したこともあるけれど、それはもっと子供だった時のことで、誓って"妹"にしたいから婚約を、なんてあり得ない」

「そ、そうでしたの……」

「そうだよ。それから、二つ目」

 今度は私の中指を突いて言う。

「マリエッタの言った通り、僕は夜会やらお茶会やらよりも、剣を振るっていたい。さすがは僕の性格をよく知っているよね、キミは」

 だけど、もし。
 ルキウスは私の指先をすくうようにして絡ませ、

「マリエッタが許してくれるのなら、剣なんかよりもキミに触れていたい。キミは気づかなかったみたいだけど、僕はずっと、こうしてマリエッタと"婚約者"らしく振舞える機会を待ち望んでいたんだよ」

「な、な……っ!?」

 知らない。だってそんな話、これまで一度だって……!!
 混乱にわななく私にくすりと笑んで、ルキウスは「一番大事な、三つ目だけど」と口を開き、