いったい、年齢を隠すことにどんな意味があるというのだろうか。
 じとりと見遣る僕に、ミズキは「すまないね」とやっぱり楽し気に笑いながら言う。
 それからふと、瞳を慈愛に緩めて、

「頑張りな、ルキウス。若いからこそ、お前さんだからこそ出来ることがある。星は回り始めた。"真実の恋"に出会ってしまったマリエッタ様が悪女に堕ちるか否か、踏ん張りどころだよ」

「……わかってる」

「もののついでだ、お前さんの星まわりも視ておくかい?」

「遠慮しておくよ。僕、運命ってヤツが大嫌いなんだ。自分の道は、自分で選びたいからね」

「こんな時でもお前さんは、変わらないねえ」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

 救ってみせる。僕が。
 たとえその心が、死ぬまで"運命の人"に向いていようとも。
 僕は、僕だけは。なにがあってもマリエッタを、信じ続けてみせる。

「……望むところだよ」

 ミズキにではなく、僕は見えない"運命"とやらに向かって呟く。

「キミがいくら悲劇を望もうと、マリエッタは譲ってあげないよ」