気を付けなきゃ、と心に刻んだ私の意識を、ルキウスが「ともかくだよ」と呼び戻す。
「マリエッタの言う通り、人は変わる。もちろんキミも、僕も。けれど、これだけは誓えるよ」
ルキウスは私の指先を引き寄せ、口づけをひとつ。
「大好きだよ、マリエッタ。キミを誰にも譲りたくない。この気持ちだけは、決して変わらないから」
「っ、ルキウス様……」
「マリエッタのお願いはなんでも聞いてあげたいけれど、"嫌ってほしい"ってお願いは叶えてあげられないかな。ごめんね」
立ち上がったルキウスが、ぐいと私の手を引いた。
わ、と勢いに傾いた私の腰を抱き寄せ、まるでダンスのホールドに似た体制をとったルキウスが、楽し気に目じりを蕩けさせる。
「世界で一番に愛してほしいってお願いなら、すぐに叶えてあげられるんだけどね?」
音楽など流れていないのに、踊り出すルキウス。
「な……っ、い、いりません! そもそも私は、婚約を破棄して頂きたく……!」
そう口にしながらも彼の調子に合わせてすんなりと踊れてしまうのは、長年の積み重ねが身体に沁みついているから。
だって幼い時から、彼がずっと練習相手になってくれていたのだもの。
多少奇抜なステップも、ルキウスが導くままにくるりと回ってみせてしまう。
「ルキウス様っ、聞いてますの!?」
「もちろん。僕がマリエッタの話を聞き逃すはずないもの」
「なら、踊っていないで婚約の破棄を……!」
「でもマリエッタだって、僕を嫌いなわけではないでしょう?」
「それは……っ」
たしかに私が婚約破棄をしたいのは、アベル様と新たな婚約を結びたいからで、ルキウスが嫌いなわけではい。
ぐっと言葉に詰まった私に、「本当にキミは可愛いね、マリエッタ」とルキウスが苦笑する。
それがここで「はい」と嘘でも頷けなかった私に呆れているのだと分かってしまったから、私はつい口を尖らせて「……嘘は、嫌いですの」と告げるしか出来ない。
ルキウスは宥めるような瞳で、
「昔からそうだもの。知っているよ。そして僕はそんなマリエッタを、心から尊敬しているし」
だからね、と。
ダンスを止めたルキウスが、妙に真剣な顔で言う。
「キミはどうしたって、"悪女"になんてなれないんだ」
「…………」
「マリエッタの言う通り、人は変わる。もちろんキミも、僕も。けれど、これだけは誓えるよ」
ルキウスは私の指先を引き寄せ、口づけをひとつ。
「大好きだよ、マリエッタ。キミを誰にも譲りたくない。この気持ちだけは、決して変わらないから」
「っ、ルキウス様……」
「マリエッタのお願いはなんでも聞いてあげたいけれど、"嫌ってほしい"ってお願いは叶えてあげられないかな。ごめんね」
立ち上がったルキウスが、ぐいと私の手を引いた。
わ、と勢いに傾いた私の腰を抱き寄せ、まるでダンスのホールドに似た体制をとったルキウスが、楽し気に目じりを蕩けさせる。
「世界で一番に愛してほしいってお願いなら、すぐに叶えてあげられるんだけどね?」
音楽など流れていないのに、踊り出すルキウス。
「な……っ、い、いりません! そもそも私は、婚約を破棄して頂きたく……!」
そう口にしながらも彼の調子に合わせてすんなりと踊れてしまうのは、長年の積み重ねが身体に沁みついているから。
だって幼い時から、彼がずっと練習相手になってくれていたのだもの。
多少奇抜なステップも、ルキウスが導くままにくるりと回ってみせてしまう。
「ルキウス様っ、聞いてますの!?」
「もちろん。僕がマリエッタの話を聞き逃すはずないもの」
「なら、踊っていないで婚約の破棄を……!」
「でもマリエッタだって、僕を嫌いなわけではないでしょう?」
「それは……っ」
たしかに私が婚約破棄をしたいのは、アベル様と新たな婚約を結びたいからで、ルキウスが嫌いなわけではい。
ぐっと言葉に詰まった私に、「本当にキミは可愛いね、マリエッタ」とルキウスが苦笑する。
それがここで「はい」と嘘でも頷けなかった私に呆れているのだと分かってしまったから、私はつい口を尖らせて「……嘘は、嫌いですの」と告げるしか出来ない。
ルキウスは宥めるような瞳で、
「昔からそうだもの。知っているよ。そして僕はそんなマリエッタを、心から尊敬しているし」
だからね、と。
ダンスを止めたルキウスが、妙に真剣な顔で言う。
「キミはどうしたって、"悪女"になんてなれないんだ」
「…………」