否定を返せない質問なんて、なんの意味も持たないと、わかっているくせに。

「~~~~どうぞお好きに!」

 投げやりに答えて、目を閉じる。

(ああ、もう! どうして私ってばこんな時すら、可愛さのひとつもない態度を……!)

 けれどこんな時に可愛さのある返答というのも、どういったものなのかさっぱり――。

「……マリエッタは、もう少し学ばないといけないね」

 どこか低い声に、「え」と零した刹那。

「――っ」

 重なった唇。
 その、さらりとした肌の感触に、ああ、ルキウスとキスをしたのだと理解した直後。

「っ!」

 ぺろりとなめられた驚きに開いてしまった唇の隙間から、熱く、柔らかな存在が侵入してくる。
 はじめて知る息苦しさと、痺れるような感覚。腰を支える掌が柔く撫でる感触さえ、脳に直接響いてくる。
 やっとのことで解放された拍子に漏れ出た吐息は、自分でも知らない甘さをまとっていて。

「――だめだよ、マリエッタ」

 てらりと湿った己の唇を優美に舐め、ルキウスがにこりと笑む。

「"お好きに"なんて言ったら、本当に好きにしちゃうよ? マリエッタの決心がつくまで、ちゃんと"待て"をさせておかなきゃ」

「~~~~っ!!」

(な、な、な……!!!)

 心臓が壊れそう。ううん、もう壊れてしまったに違いない。
 というか、というかだ。
 それってつまり、今後こうして触れ合う時は私が許可をださなさければいけないってことで。

(そんなの、私も「したいです」って言っているも同然じゃない……!)

 誠意ある優しさにみえて、なんて恥ずかしい要求をしてくるのか。
 羞恥に声を出せずにいる私に、ルキウスはなおも麗しい笑みで「ちゃんとマリエッタの意志は尊重したいからね」などと言う。

 かといってここで「許可などいりません!」なんて言おうものなら、ルキウスはそれこそ所構わず触れてきそうだし……。

(そんな想像が簡単に出来てしまうのも、実は、少しばかり心地いいなんて)

「……ルキウス様は、私を溺愛しすぎですわ」

 わざと呆れ気味に告げて、そろりと彼の背に腕を回す。
 ルキウスは一瞬、ぴたりと静止したけれど、すぐにぎゅうと抱きしめてくれて。