「お恥ずかしながら、ルキウス様の向けてくださったお心を"そう"として理解できるようになったのも、"恋"を知った後でして……。それからは知れば知るほど、向き合おうとすればすれほど、ルキウス様がいかに私を大切に、私という人間を慈しんでくださっているのかを実感いたしましたの。それからはもう、想いを占領されるばかりで……」
「……それって、つまり」
ルキウスの頬に添えていた掌に、ルキウスの指がそっと重なる。
「僕のマリエッタを大好きだって気持ちが、マリエッタのアベル殿下を好きだって気持ちに勝ったってこと?」
「っ、都合のいい心変わりだと呆れておいででしょう。愛を囁かれれば簡単に移ろう心なのだと、軽蔑されても仕方ありませんわ。それでも……自分の心に、嘘はつけません。信じてほしいと請うばかりで、証明する手段を持ち合わせてはおりませんが……私は、ルキウス様を心の底から愛しております。ルキウス様が注ぎ続けてくださった愛を、今度は私がお返ししたい。ですからどうか、ルキウス様の歩んでいくこの先を、隣で、共に歩ませては頂けませんでしょうか」
視線を上げる。拍子に、頬に雫が伝う気配がした。
どうやら気づかないうちに、涙が込み上げてきていたらしい。
いつもの私ならば、即座に顔を伏せたに違いない。
けれど、とにかくルキウスにこの気持ちを伝えたくて必死だった私は、滲む視界のままじっとルキウスを見上げ続けた。と、
「……これが最後だよ、マリエッタ」
両頬が、そっと包まれる感触。
優しい、優しいルキウスの掌。けれど気づいてしまった。
その指先が必死に隠した、怯えと、縋る幼子のような激しさに。
「やっと、やっと手放してあげる決心がついたんだ。今、マリエッタが逃げてくれないのなら、僕の手の中に残り続けるのなら。僕はもう、二度とキミを離してあげられないよ」
「構いませんわ。私だって、同じですもの。ルキウス様が別のご令嬢を婚約者に選びでもしたら、私、それこそルキウス様の夢の中のように、大暴れしてしまいますわ」
「なら、心配は無用だね。だって僕がマリエッタ以外を選ぶなんて、国が滅んでもあり得ないもの」
「……ルキウス様がおっしゃると、本当のように思えてしまいますわ」
「だって、本当のことだもの。……マリエッタ」
「……それって、つまり」
ルキウスの頬に添えていた掌に、ルキウスの指がそっと重なる。
「僕のマリエッタを大好きだって気持ちが、マリエッタのアベル殿下を好きだって気持ちに勝ったってこと?」
「っ、都合のいい心変わりだと呆れておいででしょう。愛を囁かれれば簡単に移ろう心なのだと、軽蔑されても仕方ありませんわ。それでも……自分の心に、嘘はつけません。信じてほしいと請うばかりで、証明する手段を持ち合わせてはおりませんが……私は、ルキウス様を心の底から愛しております。ルキウス様が注ぎ続けてくださった愛を、今度は私がお返ししたい。ですからどうか、ルキウス様の歩んでいくこの先を、隣で、共に歩ませては頂けませんでしょうか」
視線を上げる。拍子に、頬に雫が伝う気配がした。
どうやら気づかないうちに、涙が込み上げてきていたらしい。
いつもの私ならば、即座に顔を伏せたに違いない。
けれど、とにかくルキウスにこの気持ちを伝えたくて必死だった私は、滲む視界のままじっとルキウスを見上げ続けた。と、
「……これが最後だよ、マリエッタ」
両頬が、そっと包まれる感触。
優しい、優しいルキウスの掌。けれど気づいてしまった。
その指先が必死に隠した、怯えと、縋る幼子のような激しさに。
「やっと、やっと手放してあげる決心がついたんだ。今、マリエッタが逃げてくれないのなら、僕の手の中に残り続けるのなら。僕はもう、二度とキミを離してあげられないよ」
「構いませんわ。私だって、同じですもの。ルキウス様が別のご令嬢を婚約者に選びでもしたら、私、それこそルキウス様の夢の中のように、大暴れしてしまいますわ」
「なら、心配は無用だね。だって僕がマリエッタ以外を選ぶなんて、国が滅んでもあり得ないもの」
「……ルキウス様がおっしゃると、本当のように思えてしまいますわ」
「だって、本当のことだもの。……マリエッタ」