「改めて、お礼を言わせて? 助けてくれて、ありがとう。それと、"聖女の力"を使わせてしまって、ごめんね」

「そんな……! 助けていただいたのは私のほうですわ。ルキウス様が守ってくださったからこそ、私は今、この場にいれるのです。いくら感謝をしてもしたりないですわ。それに……ごめんなさい、ルキウス様。私が愚かだったがために、取り返しのつかないことを……あなたの命を、奪ってしまった」

 実感を伴った恐怖に、唇が強張る。
 ルキウスに包まれた指先も、きっと震えているに違いない。

「謝って許されることではありませんが、本当に……助かって、良かったですわ」

 涙を溢れさせた私に、「マリエッタ……」とルキウスが気遣わしげに呟く。
 ぎゅっと力を込められた掌は、きっと宥めてくれたのだろう。そっと壊れものに触れるようにして頬に伸ばされた指先が、とめどなく落ちる涙を拭ってくれた。