大切な愛おしい存在を壊した全てが、憎くて、憎くて――。

(この、感覚は)

 失っていたはずの魔力が。否、"私の魔力"とは別の、重く、濃い魔力が湧き上がってくるような――。

「"運命"に呑まれてはいけないよ、マリエッタ様」

 声に、顔を跳ね上げる。
 横たわるルキウスの容態を確認するようにして膝を折った、その人は。

「ミズキ様……っ!」

 どうして、と目を見張る私に、ミズキ様は「間に合ったようで安心したよ」と安堵したように微笑んだ。
 知った表情に心が緩んで、先ほどまでの暗闇に落ちていくような感覚が、すっと覚めゆく。
 途端に、涙がじわりと滲んだ。
 私はみっともなくも嗚咽をこぼしながら、

「ミ、ミズキ様……! ルキウス様が、私が、彼を……!」

「マリエッタ様。ブレスレットはしているかい?」

「へ?」

 ブレスレット。以前、ミズキ様に"お守り"だといただいたコレのことだろう。

「え、ええ……こちらの通りに」

 腕を掲げてみせた私に、ミズキ様は穏やかに頷くと、

「マリエッタ様。ルキウスを、助けてやってくれるかい?」

「それは……ルキウス様を、お救い出来るのですか!?」

「ああ、といいたいけれど、正直一刻を争う状態でね。説明は後でするよ。だから」

 歌を、うたってくれるかい?
 ミズキ様は緩やかに両目を細めて、

「その白い石に魔力を流し込むようにして、歌うんだ。大切な人を、愛する人を守りたいという祈りを込めてね。お前さんならおそらく――」

「マリエッタ嬢!!」

 届いた声はアベル様のもの。
 その姿に気が付いた時には、彼はこちらへと駆け寄ってきていて、

「マリエッタ嬢、その姿は……! それに……ルキウス!? どういうことだしっかりしろ!! くそっ、知らない顔だが、貴様がルキウスを――」

「いちおう、始めましてではないだけれどね、アベル様。ともかく、今は時間が経てば経つほど分が悪くなる。黙って見ていてくれるかい?」

「な! 妙な恰好をして、信用など出来るものか! マリエッタ嬢、今すぐルキウスを医師のもとに連れて――」

「アベル様」

 ルキウスを抱えようとした腕を、首を振って止める。
 驚愕の眼を、私はしっかりと見つめ返し、