ルキウスの胸から飛び出す、真っ赤に染まった剣の切っ先。
胸を、貫かれたのだと。
理解できたのは、ルキウスの背後に立つノックスが、突き刺した剣を引き抜いてから。
「ほらな」
ルキウスの背後ろからひょこりと顔を覗かせたノックスが、顔面に赤を散らせて笑う。
「痛いことはしなかったろ? アンタには」
「――――っ!!」
「じゃーな、マリエッタ様。次も会えたらいいな」
私が確認できたのは、踵を返したノックスが、ロザリーの腕を掴んだところまで。
なぜなら眼前のルキウスが、崩れるようにして地に伏せたから。
「ルキウスさま!!」
急いで駆け寄り傍らで膝をつく。
「マ、リエッタ……無事、かい?」
「話しては駄目ですわ!!」
急ぎスカートを寄せ集め、倒れるルキウスの腹部に押し当てた。
(とにかく、止血。止血をしなくては……!)
いま、私に残った魔力で、どこまで修復できるのだろう。
瞬く間に血に染まっていくスカートに体温が下がるのを感じながら、私は必死に自身の魔力をかき集め、掌に集中させる。
ルキウスは胸だけを薄く上下させ、
「無茶、しては駄目だよ、マリエッタ……。魔力の過剰生成は、命にかかわるって、キミも知っているでしょ……?」
「無茶をされているのはルキウス様ですわ! 命が危ぶまれているのだって……!」
(私の役立たず! どうしてもっと魔力を残しておかなかったの……!)
足りない。
これでは、傷の修復どころか止血にさえも間に合わない。
(だめ、そんなの! 私がやらないと、ルキウスが……!)
嫌な焦燥を背に受けながら、必死に魔力を振り絞る。
それなのに光は、魔力は。どんどんか細くなっていく。
――血が、止まらない。
「っ、ごめんなさい」
恐怖と、途方のない無力感。そして信じたくない予感が呼吸を奪って、視界が滲む。
「ごめんなさい、ルキウスさま……! 私が、私のせいで……!」
「それは、違うよ。マリエッタは、なにも悪くない」
「いいえ、私が!」
「ねえ、マリエッタ。話、きいてくれる?」
「今、そんな場合では――」
「マリエッタ」
そっと伸ばされた掌が、私の頬に触れた。
ぬめりとした感覚。それよりも震える指先に胸が詰まって、その掌に自分の片手を添えた。と、
胸を、貫かれたのだと。
理解できたのは、ルキウスの背後に立つノックスが、突き刺した剣を引き抜いてから。
「ほらな」
ルキウスの背後ろからひょこりと顔を覗かせたノックスが、顔面に赤を散らせて笑う。
「痛いことはしなかったろ? アンタには」
「――――っ!!」
「じゃーな、マリエッタ様。次も会えたらいいな」
私が確認できたのは、踵を返したノックスが、ロザリーの腕を掴んだところまで。
なぜなら眼前のルキウスが、崩れるようにして地に伏せたから。
「ルキウスさま!!」
急いで駆け寄り傍らで膝をつく。
「マ、リエッタ……無事、かい?」
「話しては駄目ですわ!!」
急ぎスカートを寄せ集め、倒れるルキウスの腹部に押し当てた。
(とにかく、止血。止血をしなくては……!)
いま、私に残った魔力で、どこまで修復できるのだろう。
瞬く間に血に染まっていくスカートに体温が下がるのを感じながら、私は必死に自身の魔力をかき集め、掌に集中させる。
ルキウスは胸だけを薄く上下させ、
「無茶、しては駄目だよ、マリエッタ……。魔力の過剰生成は、命にかかわるって、キミも知っているでしょ……?」
「無茶をされているのはルキウス様ですわ! 命が危ぶまれているのだって……!」
(私の役立たず! どうしてもっと魔力を残しておかなかったの……!)
足りない。
これでは、傷の修復どころか止血にさえも間に合わない。
(だめ、そんなの! 私がやらないと、ルキウスが……!)
嫌な焦燥を背に受けながら、必死に魔力を振り絞る。
それなのに光は、魔力は。どんどんか細くなっていく。
――血が、止まらない。
「っ、ごめんなさい」
恐怖と、途方のない無力感。そして信じたくない予感が呼吸を奪って、視界が滲む。
「ごめんなさい、ルキウスさま……! 私が、私のせいで……!」
「それは、違うよ。マリエッタは、なにも悪くない」
「いいえ、私が!」
「ねえ、マリエッタ。話、きいてくれる?」
「今、そんな場合では――」
「マリエッタ」
そっと伸ばされた掌が、私の頬に触れた。
ぬめりとした感覚。それよりも震える指先に胸が詰まって、その掌に自分の片手を添えた。と、