「答えることは出来ません」

「その返しが充分答えだよ。それで? 大切な仲間も揃って、どうやって淀んだ魔力を潜めていたんだい?」

「……それも、お答えはできません」

「そう。なら、それでいいよ。どうせキミを捕らえて、尋問にかけることになるのだから。真実は自ずとわかる」

「尋問ですって……!?」

 思わず声を上げた私に、ルキウスは「ごめんね、マリエッタ」と囁いて、

「キミが彼女を大切にしているのは、わかってる。僕も出来ることならば、キミの大切なモノを壊したくはない。けれど……アレはもはや重罪人なんだ。罪は、償わせないといけない」

(わかっている、わかっているけれども……!)

 理性と感情がせめぎ合って、ごちゃごちゃとしている。

「……っ、他に、他になにか、少しでも恩情をかけて頂ける策は」

「マリエッタの気持ちは最大限に汲んであげたいけれどもね。残念だけど、僕もアレを許せない。こんなにもマリエッタを傷つけたのだから」

 冷淡な声に、ルキウスの怒りを悟る。
 こうなってしまったら、ルキウスはもう、手加減などしてくれないだろう。
 無念に瞳を伏せた矢先、

「大丈夫ですよ、マリエッタ様」

 妙に澄んだ声に、私ははっと顔を跳ね上げた。
 見遣った先。ロザリーは場違いなほどに美しく微笑んで、

「それは、私がここで捕らえられたならの話です。マリエッタ様、これが最後になります。共に、この国を捨ててはくれませんでしょうか? 忠義を尽くすに値しない王です。汚れた男の下に、あなた様を置いてはいきたくはありません。非情の矛先だって、いずれマリエッタ様に向くやもしれません。ですから、さあ。どうか私を、選んでください」

 優美な仕草で手を差し伸ばすロザリーに、やっと、理解した。
 いくら願っても、どんなに望んでも――これが、最後なのだと。

「……私も、ロザリーのことが、大好きですわ」

「! マリエッタ様、それでは……!」

「それでも、その手は取れません」

「っ!」

 ロザリーが悲痛の面持ちで息を呑む。
 その様に胸がズキリと痛んだけれど、私は必死に唇を動かす。