「マリエッタ様。私はあなた様に救われ、あなた様との約束だけを糧にここまで耐え抜いてきました。王子として国への敬愛を優先するアベル様とも、騎士たる献身に固執するルキウス様とも違います。私には、マリエッタ様だけ。マリエッタ様だけが、純然たる光なのです。その光を曇らせる者は、何人たりとも許せません。それがたとえ、あなた様が心を寄せたお相手だろうと」

 ですから、と。
 ロザリーはなおさら強い瞳で私を見つめ、私の手を繋いだまま両の膝を地につき、

「私と共に参りましょう、マリエッタ様。少々生活の質は落ちてしまいますが、この身も心も、全てを尽くして生涯をお守りすることを誓います。今は友の情で構いません。いいえ、一生友のままでも。ですが私はマリエッタ様が、いついかなる時も輝いていられますよう。他の誰でもなく、私が。一番の愛と敬意をもって、この手をお支えいたします」

「ちょっ、ちょっと待ってくださいませ、ロザリー。言っている意味がよく……!」

(な、なんだかロザリーが変だわ)

 だってこの言いようではまるで、友情というよりも愛の告白のような――。

「――マリエッタ、離れて」

「!?」

 刹那、蔦のごとく伸びた雷撃が、地を駆け私とロザリーの間に割り入った。
 キャッ! と声を上げたと同時に、ぐいと力強く両肩を引かれる。

「! ルキウス!?」

 見上げた先には珍しく息を上げたその人。

(ルキウスはたしか、雷魔法を用いるのだったわ)

 つまり先ほどの雷撃は、ルキウスの発したもの。
 徐々に理解をし始めた私を見下ろして、ルキウスは安堵したように鋭い双眸を緩める。

「間に合って良かった」

「なにを……っ」

 私を背後ろから抱きしめるようにするその人の顔を、唖然と見上げる。
 けれど即座にはっと気が付き、

「なんてことをされるのです! ロザリー、怪我は――」

「マリエッタ」

 肩に置かれた掌に、ぐっと力が込められる。

「彼女が"人柱"だ」

「…………え?」

 ルキウスはスッと、獲物を見つけた猛禽類を思わせる瞳をロザリーに向け、

「不思議なんだよね。あれだけの紫焔獣を発生させるほどの"人柱"なら、誰かしら、魔力の淀みに気が付きそうなものなんだけれど。キミからはいっさい……今の今だって、淀んだ魔力の気配がない」