理由はわからないけれど、それこそがまさに、"運命"である証拠なのだと。

「お嬢様、差し出がましいようですが」

 ミラーナが少し遠慮したように言う。

「どうしてもルキウス様とのご婚約を解消されたいのでしたら、旦那様にご相談されてはいかがですか? 旦那様相手でしたら、ルキウス様もご了承くださると思いますし、王家との……アベル様とお会いになれる場もご用意くださると思うのですが……」

「……そうね。お父様ならきっと上手に立ち回って、私の願いを叶えてくださるわ。だから、駄目なのよ」

 不思議そうに瞬くミラーナに、私は背筋を伸ばして、

「私だって、デビュタントを迎えたのだもの。この婚約破棄は私の我儘なのだから、私が自分で決着をつけなくちゃ。それに、それが長年私の婚約者でいてくれたルキウス様にお返し出来る、誠意だと思うの」

「お嬢様……」

 ルキウスは私と違って交友が広いし、人に好かれやすい。
 私が知らないだけで、"ルキウスの婚約者"だという立場であったからこそ守られていた部分も多いのだと思う。
 だからちゃんと、私が自分で終わらせなくちゃ。

「とはいえ、今のままではてんで駄目ね。悔しいけれど、ルキウス様のほうが私より一枚も二枚も上手。のらりくらりとかわされて、いつまで経っても婚約の破棄などしてくれないわ」

「ルキウス様は以前よりお嬢様のことを、大好きでいらっしゃいますからね……」

「え、と。その、ミラーナは知っていたの? ルキウス様が私を妹のようにではなく、将来を誓う相手として"好き"だと想ってくださっていたって……」

「当然です! 私がルキウス様にお会いしたのは、既にお嬢様とご婚約を結ばれた後でしたが……。でも、おそらくはだからでしょうね。お嬢様付きの侍女になる私が、お嬢様を害さない相手なのかどうか。何度も査定さていされているようでしたもの」

「そう、だったの……」

 ぜ、全然気が付かなかった……。

(なんで!? 私ってけっこう鋭いほうだと思っていたけれど、実は違ったの!?)

 ショックに打ちひしがれる私に、ミラーナが「お嬢様は、そのお嬢様のままでいてくださいね」なんて慰めてくる。
 今だ呆然としている私の頭をよしよしと撫でながら、薔薇を見つめ、