近い顔、伝わる体温。
 なによりも彼に抱きかかえられているだなんて、ほんの少し前の私だったならば、恥ずかしいやら嬉しいやらで胸が締め付けられていただろうけれど。
 ルキウスへの想いを自覚した今は、ただただ驚愕と焦燥だけが先行していて。

(こんな姿、他のご令嬢方にどう思われるか――っ)

「お、降ろしてくださいませ……っ!」

 周囲の目などものともせず、スタスタと扉に向かって歩いて行くアベル様は前方を捉えたまま、

「だがこうでもしなければ、キミは治療を続けてしまうだろう。言ったろう、決して無理はするなと。治療を続けたいのなら、まずはしっかり休んでから――」

 その時だった。
 開かれた扉。傷を負い、損傷した隊服をまとう数名の中央に立つのは。

「ルキウス様……っ」