すると、ご令嬢のひとりがうるると瞳を潤ませ、

「羨ましさからマリエッタ様を悪女としていた自分が、許せませんわ。マリエッタ様はこんなにも聡明で、慈悲の心を併せ持った献身的なお方ですのに……!」

「それに、立派な勇気もお持ちですわ!」

「忍耐力だって!」

 口々に叫ばれる内容に、「あ、あのっ」と戸惑いながらも顔が熱くなる。

(ど、どどどどどうしたらいいのかしら!?)

 正直、嬉しい。
 嬉しいけれど、褒められ慣れていないせいで、どう反応するのが正解なのかがわからない……!

 あたふたとしていていると、「とにもかくにも、ですわ」と初めに頭を下げてくれたご令嬢の声に、周囲が止む。

「私達、マリエッタ様に気づかされましたの。自分たちも、この国の貴族の一員なのだと。私達に適切な魔力はありませんが、それ以外についてはお手伝いさせてくださいな」

「もちろん、マリエッタ様に身を粉にして治療にあたれと申しているわけではありませんのよ?」

「私達にもこの国を守らせてください!」

 私を見つめる数々の瞳は、力強く、温かで。

「皆様……。ありがとう、ございます」

 ねえ、ルキウス。信じられる?
 あなたに置いて行かれまいと必死に磨いた魔力が、こんなにも、新しい未来を切り開いてくれたの。

 今までも、これからも。きっと社交界では、ひとりぼっちなのだろうと思っていたけれど。
 あなたが導いてくれたおかげで、私にも共に戦ってくれる人たちができた。

(ルキウス。今すぐにあなたに会って、直接話したい)

 けれど、今は。
 こみ上げてきた衝動に滲む目尻を拭って、私は彼女たちをしっかりと見据える。

「一人でも多く、救いましょう。どうか共に戦ってくださいませ。皆様の傷も必ず、治してみせますわ」


 ご令嬢方のサポートが入ってそう経たないうちに、ホール内の雰囲気が不思議と変わり始めた。
 命に関わるだろう重症患者が徐々に治療され、浄化を受けているせいもあるのだろうけど……。
 なんというか、悲壮と哀愁漂う陰鬱さが薄まり、国への忠義を尽くさんと奮闘する活力が溢れているというか。

「……なかなか、しつこいですわね」

 ぽそりと呟いたご令嬢の声に、私は開かれた扉を見遣る。