任務中の彼は、どんな顔をしているのだろう。
 私の知る、私と一緒にいる時の彼は、どうにも頬が和らいでいるから……。
 いえ、それはそれでもちろん嬉しいのだけれど、任務にあたる真剣な面持ちも見てみたいというか。

 途端、ぽんと脳裏にルキウスの姿が浮かぶ。
 緊張を帯びた瞳は鋭く、端正な頬は引き締まり、凛とした姿勢で剣をふるう姿。

「……か、かっこいい」

(って、私ったらこんなところで何を想像しているの……!)

 これではまるで初めて物語に憧れた少女じゃない!
 恥ずかしい空想を消し去ろうと、咄嗟に頭上をパタパタとはらった、その時だった。

「――マリエッタ嬢っ」

「え……?」

(この、声は)

 信じらない気持ちで振り返る。
 するとそこには、どこか焦燥の滲んだ顔で肩を上下させる――。

「アベル様……っ!?」