「そうさ。マリエッタ様だって、"かっこつけている"ルキウスだけを好いたわけではないだろう? ルキウスだって、なにもマリエッタ様の見てくれだけを"愛らしい"と心酔しているわけでもないしね。まあ、私がいわずとも、マリエッタ様のほうがよく心得ているだろうけれど」

「…………」

(ミズキ様の、言う通りだわ)

 ルキウスは確かに私の外見も褒めてくれるけれど、いつだって私の本質と向き合ってくれていた。
 知って、知ろうとしてくれて。それで尚、私をあんなにも好いてくれている。
 私は、そんな彼が大好きなのだから。

 彼に認めてほしいと願うのなら、私が恐れずに、彼と向き合うべきなのだ。
 下手に着飾らずに。私という、ひとりの人間として。

「……ありがとうございます、ミズキ様」

 肩の強張りが弛緩する。

「素直に、お伝えしてみますわ。信じていただけるまで、何度でも。我儘を通したいのなら、体裁などに拘っていてはいけませんね」

「うんうん。相手を想うあまり思い悩んでしまうなんて、なんともいじらしいけれども。ただ、ね。伝えないままでは、相手にとっては"ない"も同然だからね。……お前さんたちはにはどうか、すれ違ったまま後悔してほしくはないのさ」

「ミズキ様……」

 その瞳には、いったい何が見えていたのだろう。
 過去を憂うような表情で宙を見つめていたミズキ様は、「さてと」とよく知った笑みに切り替え、

「マリエッタ様の心も定まったことだし、ここらでまた今の星周りを見てみるなんてどうかな?」

「よろしいのですか?」

「むしろ、見せてもらえるとありがたいかな。あの子はちっとも見せてくれやしないからねえ。近頃は少し"忙しい"ようだし、マリエッタ様の星周りは少なからず、あの子にも影響するはずだから」

(ルキウスってば、どうしてミズキ様にお見せしないのかしら)

 今度、尋ねてみるのもいいかもしれない。
 そんなことを考えながら、はい、と差し出されたカンザシを受け取る。
 ミズキ様の「失礼するね」という合図と同時に、雫型の粒がふよふよと光を帯びた。
 その美しさに見惚れていたのもつかの間。

「……え?」