「んー、そうだね。森は僕たちが頻繁に調べているし、王都のほうは防策隊が目を光らせているみたいだしね。聖女の力を持つ王妃様が亡くなられて五年。看治隊の浄化魔法も無限ではないし、騎士団長も色々と策を練っているみたいだよ。特に、莫大な浄化魔力を必要とする"人柱"が出ちゃうと厄介だから」
稀に。何かを深く深く恨み、呪い。
己の魔力に影響するほどに精神を闇に傾けてしまった者が、その魔力を媒介にして紫焔獣を生み出すことがある。
彼らは"人柱"と呼ばれ、捕縛された後は専用施設にて浄化の儀を受け、その魔力を封じられるというけれど。
(浄化の儀って、本来ならば、強力な浄化魔法を扱える聖女様が執り行うのだっけ)
けれども聖女であった王妃様――アベル様のお母様が亡くなられてからは、騎士団の看治隊と呼ばれる人たちが数人がかりで浄化の儀を務めているという。
(そういえば、アベル様はずっと聖女をお探しだとか)
王妃様が亡くなられ、喪が明けたその日から、アベル様は聖女探しを始められた。
聖女の不在は、我が国にとって多大なる痛手。
早急に聖女を見つけ王都に据えななければ、いつかこの国は、紫焔獣に支配されてしまう。
けれども"聖女の魔力"というのは、目覚めの時が来るまでは対象者の内で眠っているのだという。
いつ、どこで。何がきっかけで"聖女"の魔力が目覚めるのか、誰にも分からない。
アベル様の聖女探しは国中が知っているし、"目覚めの時"を迎えた者がいれば、すぐに報告が来るのだろうけれど……。
少なくともまだ、私の耳には聖女発見の噂すら聞こえてこない。
(アベル様はきっと、"聖女"が見つかるまで、ご婚約者をお決めにはならないつもりなのね)
アベル様はルキウスと同じ十八歳。けれどまだ、誰とも婚約をしていない。
それはアベル様のご意向が強いのだと、あちこちで囁かれているけれど。
まるで彼の心内を覗いたかのように、私には分かる。
今はとにかく、"聖女"探しに集中されたいのだろう。
あのお方は誠実で、真面目で。なによりも国のためを一番に考えていらっしゃるから――。
「――さま、お嬢様!!」
「っ!」
呼びかけに、はっと意識を浮上させる。
稀に。何かを深く深く恨み、呪い。
己の魔力に影響するほどに精神を闇に傾けてしまった者が、その魔力を媒介にして紫焔獣を生み出すことがある。
彼らは"人柱"と呼ばれ、捕縛された後は専用施設にて浄化の儀を受け、その魔力を封じられるというけれど。
(浄化の儀って、本来ならば、強力な浄化魔法を扱える聖女様が執り行うのだっけ)
けれども聖女であった王妃様――アベル様のお母様が亡くなられてからは、騎士団の看治隊と呼ばれる人たちが数人がかりで浄化の儀を務めているという。
(そういえば、アベル様はずっと聖女をお探しだとか)
王妃様が亡くなられ、喪が明けたその日から、アベル様は聖女探しを始められた。
聖女の不在は、我が国にとって多大なる痛手。
早急に聖女を見つけ王都に据えななければ、いつかこの国は、紫焔獣に支配されてしまう。
けれども"聖女の魔力"というのは、目覚めの時が来るまでは対象者の内で眠っているのだという。
いつ、どこで。何がきっかけで"聖女"の魔力が目覚めるのか、誰にも分からない。
アベル様の聖女探しは国中が知っているし、"目覚めの時"を迎えた者がいれば、すぐに報告が来るのだろうけれど……。
少なくともまだ、私の耳には聖女発見の噂すら聞こえてこない。
(アベル様はきっと、"聖女"が見つかるまで、ご婚約者をお決めにはならないつもりなのね)
アベル様はルキウスと同じ十八歳。けれどまだ、誰とも婚約をしていない。
それはアベル様のご意向が強いのだと、あちこちで囁かれているけれど。
まるで彼の心内を覗いたかのように、私には分かる。
今はとにかく、"聖女"探しに集中されたいのだろう。
あのお方は誠実で、真面目で。なによりも国のためを一番に考えていらっしゃるから――。
「――さま、お嬢様!!」
「っ!」
呼びかけに、はっと意識を浮上させる。