ミズキ様との出会いは幼い頃だと言っていた。
 思えばルキウスはもとより多方面に秀でてていたけれど、けして己が持つ才能だけに頼る人ではなかった。

 今のルキウスの持つ"黒騎士"の賞賛は、間違いなく彼の血汗滲む努力の賜物。

 それは私と婚約をしてからも。
 ううん、むしろ、それまで以上に勉学に剣術にと励むようになった。
 その姿はまるで、何かに焦っているかのように。

(あの頃のルキウスは、いつだって気を張っていたから)

 きっとこの空間が、ミズキ様が。
 ルキウスが周囲を気にせずにすむ、唯一になっていたのだと。

「おまちどーさま」

 現れたミズキ様が、机上に緑茶と茶菓子を置いてくれる。
 私は「これは……」と思わず目を瞬いて、

「黄金色をしたソースが、なんとも美しい茶菓子ですわね」

 淡い白磁のお皿に乗せられているのは、細い木の棒にささった一口サイズの丸いお菓子。
 ころころと三つほどが綺麗に並んでいる。
 色は綺麗な白をしているよう。上からは蜂蜜のような黄金色のソースがたっぷりとかけられていて、きらきらとした光沢が美しい。

(これもミズキ様の国のお菓子なのかしら)

 まじまじとお菓子を見つめる私に、対面の机上にもお茶と茶菓子を置いたミズキ様は「そうでしょう」と頷いて、

「"みたらし団子"っていう菓子さ。珍しく材料が手に入ったもんでね、これはぜひとも焼き立てを食べてもらわなきゃって気合いがはいってしまったよ」

「まあ……。突然の訪問となってしまいましたのに、お気遣いありがとうございます、ミズキ様」

「いいのいいの、私が好きでやっているんだから。そのね、ソースのついていない木の棒……"くし"っていうのだけれど、それを持って直接かじって食べるのさ。この間の鯛焼きみたいにね」

 さあ、どうぞと。ミズキ様が対面に腰かけたのを確認して、私は言われた通り棒を摘まみ上げた。
 とろっと滴り落ちるソースが食欲をそそる。
 ドレスに垂れないようお皿で受け止めながら、あむりと球体にかじりつく。

「っ!」

「お口にあったかな?」

 私は必死に頷きながら急いで咀嚼して、