「ロザリーがエストランテとなる瞬間に立ち会えていなかったら、私、きっと後悔を抱えたままでしたわ。ギリギリになってから気が付くなんて、とんだ愚か者ですね、私は」

「ギリギリでも、間に合ったよ。マリエッタはちゃんと、自分で大切なモノを選んだんだ。全然、愚かなんかじゃない」

「それだって、ルキウス様が助けてくださったからですわ」

 ルキウスを振り返る。私は数秒のためらいを振り切って、

「その……どうして、歌劇場にいらっしゃったのですか? 馬はもちろん、馬車やミラーナを手配してくださったのも、ルキウス様ですのよね? それに……エスコートをされるはずだった、ご令嬢の方は……」

 途端、ルキウスは「え?」と驚いたようにして、

「エスコートをするはずだった、ご令嬢? なんのことだい? 僕はマリエッタしかエスコートしないよ」

「へ? だって、教会には別のご令嬢をお連れになる予定でしたでしょう?」

「そんな予定、一度だってないよ。誰がそんな嘘を」

「あ、いえ、違います。ルキウス様がお席は二つのままで、別の同行者をお連れになると言っていらしたので、てっきり他のご令嬢をお誘いするものだとばかり思っていたのですが……。ち、違いますの?」

「…………」0

 そ、かあ、と。
 ルキウスは天井を仰ぎ見てから、私を見た。
 弱ったような苦笑を浮かべて「まず、第一に」と歩を進めると、私の隣に並び立つ。

「馬やらその他もろもろを手配したのは、確かに僕だよ。言ったでしょ? 僕はキミの婚約者である前に、幼馴染だって。僕の知るマリエッタなら、教会に向かおうとするんじゃないかなって思ったから。だから手助けができるように、準備だけはしておいたんだ。僕はいつだって、マリエッタの味方でいたいから」

 それから、次に。
 ルキウスは少しだけ視線を落として、

「さっきも言ったけれど、僕はマリエッタ以外のご令嬢をエスコートする気はないよ。それは今までも、これからも。……キミは、きっとそれを望まないだろうけれどね」

「そ、れは……」

 言葉に詰まった、その時だった。

「ルキウスさま! やっとみつけました!」

「え?」