夏休みが明けて、二学期が始まった。
始業式早々テストが行われ、そのテストもすぐに返却された。
勝負の夏休みに塾で戦ったにもかかわらず、戦績はいまいちでぱっとしなかった。

「夏休みの成果はこれから出るから落ち込むことはないが、次の模試の結果次第では、志望校を考え直した方がいいかもな」

先生に突きつけられた現実が、鋭いナイフとなって胸に突き刺さる。
ああ、痛い。

生徒たちが忙しく廊下を走り回る喧騒の中で、私は進路指導室前の廊下で一人ぽつんと立ちすくんでいた。
翌日から文化祭、体育祭とイベントが続くというのに、なんだか憂鬱になる。

私たちの学校では、二学期に一週間に及ぶ学校の一大イベント、通称「祭り」が開催される。
文化祭と体育祭を合わせたもので、一日目は文化祭をメインにした会場づくり、いわゆる「準備祭り」、二日目、三日目で文化祭、四日目は文化祭の片づけと体育祭の準備とリハーサルを兼ねた「入れ替え祭り」、五日目は体育祭、六日目は「片付け祭り」。
まさに「祭り」な一週間なのだ。
今日はその一日目である「準備祭り」だ。
明日から二日間にわたる文化祭が始まる。

準備はそれなりに楽しめた。
私たちのクラスはたこ焼き屋をやるんだけど、たこ焼きを焼くという初めての経験に、ちょっとわくわくしたりもした。
看板を作ったり、たこ焼きを焼く練習をしたり、買い出しに行ったり。いつもと違う学校生活に、受験のことを忘れられるひと時だった。
いつもの校舎や教室が違う世界に見えて、日程に追われる慌ただしい日々さえ新鮮で心地よい感じがした。

それなのに、そんなひと時を一気にさらっていく進路指導。
どうしてこのタイミングなのだろう。
受験のことを忘れた罰だろうか。
私たち受験生はいつだって「受験」「進路」という言葉に脅かされて生きている。
ちょっとでも楽しんでしまったら、息抜きをしてしまったら、バチが当たるということなのだろうか。