こうして二日間にわたる文化祭が終わっていった。
翌日には文化祭の片づけと、その翌日に執り行われる体育祭の準備、いわゆる「入れ替え祭り」が行われた。
文化祭の楽しさや名残惜しさを感じる暇もなく、文化祭の備品やらステージやらセットは午前中に跡形もなく片付けられ、午後には一気に体育祭ムードとなった。
準備をしながら各競技のリハーサルや動きの確認をするために、全校生徒が体操服で走り回る。
自分たちの出番がなくても、委員会で割り振られた仕事があるので、休んでいられない。
委員会の仕事がなくても、入退場門の設営や、応援席、来賓席のテント張り、校庭のごみ拾いや、学校周辺の美化活動を行う。
この日はとにかく忙しい。
一年で一番、忙しい。
そんな日であっても、坂井さんは学校に来なかった。
そして、あいつも。
あいつは今年も対抗リレーの選手に選ばれていたはずだった。
だけど、リハーサルのスタートラインに、あいつの姿はなかった。
違うチームにもかかわらず、広瀬が代走で二周走って、学校中の注目を集めていった。
もちろん、体育祭当日もあいつの姿はどの競技にも見つけられなかった。
最終競技のリレー選手が気合の準備運動をしている場にもいなかった。
入退場門にもいなかった。
第一走者がスタートラインに並んだ時もいなかった。
僕はスタートラインの脇に立って、二周走る気満々の広瀬を見ていた。
僕は保健委員の仕事で、走ってきた順に次の走者をスタートラインに並ばせる仕事をしていた。
なぜ保健委員の仕事かというと、我先にとものすごいスピードで走りぬけていく中で、他の選手との衝突、転倒はごく当たり前のことで、すぐに処置をできるようにと救急セットを腰に、この場に配備されるのだ。
他にもコーナリングでのもつれあい、時にはゴール直後の倒れこみや酸素補給など、とにかく対抗リレーは特別こういったトラブルが多いのだ。
だから僕は、気を引き締めてここに立たなければならないのだ。
色順を間違えれば、こちらもいろんな意味で命取りだ。
緊張感が、僕の体を締め付ける。