殺したい、息の根を止めたくてたまらなくなった。バキリと自身の爪を伸ばし、雪弥が眼球を抉ろうと振るった手を、少女はふわりと浮くようにしてあっさりと避ける。
雪弥の形のいい唇に、薄らと笑みが浮かんだ。目の前にいるのが女の子であるとか、捜していた少女であるとか頭に浮かばなかった。碧い光を宿した目で獲物をロックオンし、まずは『邪魔なその足』を斬り落とすべく、地面を踏み締め急発進した。
その時、道に飛び込んできた宮橋が怒声を上げた。
「僕はいかなる場合であったとしても殺人は許さない!」
初めて見せる怒りの形相で叫び、ビリビリと大きな声を響かせた。雪弥の手がピクリと反応する。
「いいか止まれ雪弥君! 一旦頭を冷やせ馬鹿者が! 存在の名は分からないが――『蒼慶という名を兄に持つ蒼緋蔵雪弥、蒼緋蔵家の番犬よ、今すぐ爪と牙を引っ込めろ』!」
あ、兄さん……。
そばにいられないと出てきたんだった――前触れもなく思い出させられた雪弥は、よく分からないモノが胸を圧迫し込み上げるのを感じて、知らず爪が元の長さに戻った。
ぐらりと頭の中まで揺れるみたいだった。
雪弥の形のいい唇に、薄らと笑みが浮かんだ。目の前にいるのが女の子であるとか、捜していた少女であるとか頭に浮かばなかった。碧い光を宿した目で獲物をロックオンし、まずは『邪魔なその足』を斬り落とすべく、地面を踏み締め急発進した。
その時、道に飛び込んできた宮橋が怒声を上げた。
「僕はいかなる場合であったとしても殺人は許さない!」
初めて見せる怒りの形相で叫び、ビリビリと大きな声を響かせた。雪弥の手がピクリと反応する。
「いいか止まれ雪弥君! 一旦頭を冷やせ馬鹿者が! 存在の名は分からないが――『蒼慶という名を兄に持つ蒼緋蔵雪弥、蒼緋蔵家の番犬よ、今すぐ爪と牙を引っ込めろ』!」
あ、兄さん……。
そばにいられないと出てきたんだった――前触れもなく思い出させられた雪弥は、よく分からないモノが胸を圧迫し込み上げるのを感じて、知らず爪が元の長さに戻った。
ぐらりと頭の中まで揺れるみたいだった。