ひらり、と別の通路へ入る着物の裾が見えた。
薄暗いのに、やっぱり不思議とぼんやり光っているように見えた。
意外にも宮橋が付いて来られているのを感じて、雪弥は一旦目の前に集中して少女の後を追った。相手は十五歳くらいの女の子だと思っていたのだが、右へ左へと進んでも、曲がっていく姿がチラリと目に映るばかりで距離は縮まらない。
しばらく二人分の足音が反響しているのを聞いていた雪弥は、不意に違和感を覚えた。追いかけている少女の方からは、髪や着物の先が少し見えるばかりで足音が拾えない。
着物や髪の感じからすると、少女は逃げて走っているという感じもなかった。
変だなと思って次の通路を曲がったところで、珍しく「うわっ」と声が出て咄嗟に足を止めた。
先の目の前に、あの少女が静かに立っていた。手二つ分はあろうかという白く伸びた二本のツノ。見据えてくる黒い目は、薄らと金色を帯びていて獣みたいだった。
ふっと少女――ナナカの小さな唇が開く。
「お腹がとても空きました」
「へ?」
薄暗いのに、やっぱり不思議とぼんやり光っているように見えた。
意外にも宮橋が付いて来られているのを感じて、雪弥は一旦目の前に集中して少女の後を追った。相手は十五歳くらいの女の子だと思っていたのだが、右へ左へと進んでも、曲がっていく姿がチラリと目に映るばかりで距離は縮まらない。
しばらく二人分の足音が反響しているのを聞いていた雪弥は、不意に違和感を覚えた。追いかけている少女の方からは、髪や着物の先が少し見えるばかりで足音が拾えない。
着物や髪の感じからすると、少女は逃げて走っているという感じもなかった。
変だなと思って次の通路を曲がったところで、珍しく「うわっ」と声が出て咄嗟に足を止めた。
先の目の前に、あの少女が静かに立っていた。手二つ分はあろうかという白く伸びた二本のツノ。見据えてくる黒い目は、薄らと金色を帯びていて獣みたいだった。
ふっと少女――ナナカの小さな唇が開く。
「お腹がとても空きました」
「へ?」