自由に使える部隊というよりは、監視みたいなものだ。

 戸籍すら持たず名前もない、お面を着用した国家特殊機動部隊暗殺機構の者。

 彼らは雪弥の状況や居場所などを、ナンバー一に報告する役目も担っている。代わりに報告してもらっていると思えば、その事について文句を言うつもりは『今更』ない。

 雪弥は、灰や蒼が混じったような色素の薄い髪を風に揺らして歩いた。付いてくる宮橋をチラリと確認しようとしたところで、ふと筋道の方へ視線が引っ張られた。

 そちらに目を留めて、ハタと足が止まってしまった。

 凛、と頭の中で勝手に音が上がった気がした。揺れた美しい着物が、夕暮れ時の薄暗い中で、花弁模様と共に白く浮かび上がって見える。いや、白いのはそれだけではないのだ。

「………………宮橋さん、捜しているその女の子って、実は鬼だったりするんですかね……?」

 思わず、そちらを見たままそう尋ねてしまった。

 一人の華奢な少女が、通路を奥へと過ぎっていこうとしていた。ぼんやりとした横顔、洋服の上から羽織っているのは大きな着物で、揃えられた黒い髪が肩甲骨あたりで揺れている。

 その黒い頭には、――とても長い白い二本の『(つの)』があった。