土地勘もない中、雪弥は、さてどうしたもんかなと足を進めた。

 ぼんやりと人混みを眺めて、見慣れない土地の都会風景を黒いコンタクトの目に留めていった。制服姿の学生もまだ多く行き交っていて、夕暮れは色を薄めて寂しげなブルーだ。

「勘、ねぇ…………」

 本当にそんなんでいいのかな、と今更のように思う。

 捜索を始めた際、宮橋からは「都会では珍しい真っ黒な髪のオカッパ」とざっくり外見的特徴だけ聞かされていた。意識もない状態でふらふらと歩いているのなら目立つだろうから、と雪弥も思っていたのだが、そういった中学三年生らしき少女は見かけていない。

 この世界から、消えたり戻ったりしている。

 本当にそんな事あるのだろうか? もし違っているのなら、夜狐の方にでも協力を頼めるのだが……。

 雪弥は、一桁ナンバーのエージェントにそれぞれ与えられている暗殺機動隊を思った。こうして感知出来ないくらいの距離を持って、隊長『夜狐』を筆頭にまたどこか遠くから窺っているのだろう。