すると、しばし歩道の端で立ち止まっていた宮橋が、忌々しげにゆらりと顔を上げてこちらを見た。
「――こうなったら、犬の勘に任せてみるか」
真っ直ぐ見つめられた雪弥は、「え」と声が出た。
しばし間を置いた後、まさかそれは自分を指しているのかな、と少し遅れて気付き「あの……」と戸惑いがちに口を開いた。
「宮橋さん、僕を警察犬みたいに言われても困ります」
「何を言っているんだ? 僕は勘を貸せと言っただけで、君に優秀な警察犬の嗅覚を求めてないぞ」
キッパリと言ってのけた宮橋が、美麗な顰め面でビシッと近くから指を突き付けてくる。
雪弥はまたしても返事が遅れた。
「……それ、露骨にそれ以下で構わないって言い方じゃ……」
「いいか雪弥君、この一時間前から、確かに近くによく『出て』いるはずなんだ。それでいて彼女は捕まらないし姿を見掛けだってしない。――こうなったら一旦は運に賭ける」
「そんなに切羽詰まってでもいるんですか?」
偉そうな態度で堂々と説かれてしまった雪弥は、呆けて断る台詞も出てこなかった。歩き続けている現状にそこまで飽きてしまっているのだろうか……と、ちょっと心配になった。
「――こうなったら、犬の勘に任せてみるか」
真っ直ぐ見つめられた雪弥は、「え」と声が出た。
しばし間を置いた後、まさかそれは自分を指しているのかな、と少し遅れて気付き「あの……」と戸惑いがちに口を開いた。
「宮橋さん、僕を警察犬みたいに言われても困ります」
「何を言っているんだ? 僕は勘を貸せと言っただけで、君に優秀な警察犬の嗅覚を求めてないぞ」
キッパリと言ってのけた宮橋が、美麗な顰め面でビシッと近くから指を突き付けてくる。
雪弥はまたしても返事が遅れた。
「……それ、露骨にそれ以下で構わないって言い方じゃ……」
「いいか雪弥君、この一時間前から、確かに近くによく『出て』いるはずなんだ。それでいて彼女は捕まらないし姿を見掛けだってしない。――こうなったら一旦は運に賭ける」
「そんなに切羽詰まってでもいるんですか?」
偉そうな態度で堂々と説かれてしまった雪弥は、呆けて断る台詞も出てこなかった。歩き続けている現状にそこまで飽きてしまっているのだろうか……と、ちょっと心配になった。