しばし二人の間で会話が途切れた。

 行き交うスーツの人々の中で、やや歩みを遅め見つめ合っていた。返事を待っていた雪弥は、なんだか妙な表情でじーっと見つめられ続けてしまい、先に声を掛けた。

「なんですか、その目は?」
「僕が言うのもなんだが、――君が大人になる将来が心配になってきた」
「え。僕はもう成人した大人ですよ」

 真顔で何を言っているんだろう、と雪弥は少し困惑した。

 自分が二十代前半だった頃を思い返した宮橋が、なんだかなぁと首を捻って頭をガリガリとかいた。話を戻すように「まぁ、そうだな」と言葉を切り出す。

「僕は署で三鬼から話を聞いて、ナナミという少女の写真も見ている。……だかな、なんというか……彼女の気配がどうも薄いというか」
「薄い?」
「説明が難しいんだが、――とにかくかなり『見付け』づらい」

 何かしらたとえ話でも交えようという気配を見せた宮橋が、まるでどうせ理解してもらえないと途端にやめたようにして、不意に立ち止まってそう話をしめた。