「それでいて僕がいる」

 そう告げて言葉が途切れる。

 雪弥はその静かな眼差しに、他の誰よりも引き寄せる――という言葉を感じた気がした。けれど始めの説明を思い返すと、恐らく彼に関する所は質問してはいけなのだろう。

 なんだか、これまで出会った中でもっとも掴み所が分からないというか。

 不思議な人だなと思いながら、雪弥は軽く頭をかいて彼の隣に並んだ。足並みを揃えて歩く中、横顔に視線を覚えつつ自分が知っている範囲内で考えて、引きが強いや悪いといった内容なのだろうと、ざっくり簡単に納得する事にした。

「そういう『引き』というのは、実際あったりするんですかね」
「あるさ。実際、この土地では不可解な事件がもっとも多く起こっている」

 宮橋が混雑した人混みへと目を戻し、ポケットから手を抜いて思案顔でスーツの襟を引っ張った。

「だからL事件特別捜査係がある」

 そう言うと、また言葉が途切れた。詳細を語る気はないらしい。だいぶ前、あの二人の刑事と話した場所の近くまで戻ってきたなぁ、と雪弥は意味もなく現在地を思ったりした。