面差しが似ているかと問われれば、『そうだ』とも答えられるのかもしれない。

 けれど、やはり全くの別人だ。幼さなどない、完全な大人の男だった。

 受け継がれた血の記憶の中で、その魂は、生きている時に憐れんだ自分の中の獣の夢を見る。憎むでもなく、畏れるでもなく、ただただその男は慈悲の心で憐れんだのだ。

 自分の運命を呪わなかったのか。

 君もまた、若くして戦いで死んだというのに?

 けれど、それは全くなかったのだろうという事は、その微笑みと穏やかな目を見れば一目瞭然だった。――僕は軍人という生き様を知らないから、よくは分からないけれど。

 恐らくは彼ほど、その血を理解した歴代の副当主はいないだろう。


 事実を見れば、憐れむべくは人か。

 けれど、全てには始まりがあるのを忘れてはならない。


 (おん)(おん)(おん)、おん……獣の咆哮がする。狂ったように響き続けて、反響と残響で誰の声も届かない。


「ああ、なんとも哀しい『犬』だねぇ」


 過去へ過去へと遡るような映像の断片の途中――僕は、思わずポツリと言った。

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