「きちんと言葉も絞った『良(よ)い質問』だね。それくらいの『占い』であれば、この前の貸し分で事足りる――その人間の娘、この市を超える事はない。ここと、そして隣り合う二つの名前の土地を、ふわふわと現われたり消えたりしている」

 それ以上は()えないよ、と猫がくすくす笑った。

「あたしは人の言葉を理解し、奇怪にも本を読み、そうやって『こちら側』に落ちた過ぎない。ただの長生きであって、けったいな力なんてのはないからね」
「それで十分だ。僕は君のように『そちらの範囲』を知らない」
「そりゃ、こっちの世界で生きている人間だからね。私が『こちらの範囲』を把握する事が出来ないのとおんなじさ。視えるのは地名、地図は言葉としかならない」

 つまり図形として出てこないのだろうか、と雪弥は不思議に思った。けれど風景や絵画のように、ただただやりとりを眺めてしまっている自分がいる。

 語る女の子がそこに見えているのに、存在感がないせいで一つの映像を見ているかのようだった。護衛対象に害がなければ、と面倒で考えるのをやめているだけか。