その場所には、女の子が一人いた。年頃は十二、三歳ほどだろうか。青みかかった銀色の長い髪をしており、季節は夏だというのに、冬用の古風な風避けのコートに身を包んでいる。そこから覗いた膝丈のスカートの片足を置くようにして、胡坐をかいて座っていた。

「なんだ。珍しく客かと思ったら、『けもの』と『とりかえこ』かい」

 彼女が猫みたいな檸檬色の目を向けて、幼い声に不似合いな口調で言った。

 どうしてか、彼女の口から出された単語が、耳の手前でぼやけるみたいな違和感を覚えた。頭の中で意味を持つ言葉として変換されなかった雪弥は、ゆっくりと首を傾げる。

 それを見た女の子が、けだるげに足の上で頬杖を付いた。宮橋へ真っすぐ目を向けると、「で?」と見ための年齢とはアンバランスな顰め面をする。

「久しぶりに来たかと思えば、連れ同伴で一体なんの用だい? ただ占い出来るだけのあたしとしては、いきなり牙を向かれたらたまらないんだけどね」